労働生産性については、労働者個々の話と日本全体的な話を区別しないと議論が噛み合わない。
個々の一般論としては、労働生産性が高い労働者には高賃金を払うべきであると考えるし、企業としては労働生産性が高い従業員だけを雇用したい、と考えるのが普通であろう。ここでは全体的な話を考えてみたいと思う。
日本で実施されている新卒一括採用では最初から、労働生産性が高いか否かはわからない。本人にとっても業務への適正は不明である。したがって、従来は、企業は教育コストと期間をかけて新卒採用者を育成した。でも、確率的に何割かは向いていない業務に配属せざるを得ない状況が発生することがあった。結果として、全体的な労働生産性は最大化されないという状況になる。
さらに、経済学では良く知られる理論として、パレート理論がある。パレート理論の概要を紹介すると以下のようになる。
・イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱
・所得の分布について「社会全体の富の8割は上位2割の高額所得者に集中し、残りの2割が8割の低所得者に分配される」という理論
・さまざまな方向に拡大解釈され、たとえば「企業の売上げのうち8割は優秀な上位2割の社員によってもたらされる」などと考えられるようになった。
パレート理論に従えば、労働生産性も2割の社員が8割を実行し、それ以外の8割の社員が残りの2割を実行するということになり、結果として、全体の平均としては労働生産性はベストに比較すれば低い状況になる。よって、製品・サービスのコストは高くなり、利益は圧縮されるため、労働生産性が高い社員の賃金は抑えられ、低い社員の賃金は若干高めになる。
日本の場合、労働法として解雇は容易ではないため、労働生産性をベストにする手段は従業員個々の能力向上または、社内人事異動に限られる。つまり、海外に比較すれば自分に向いた業務や組織を探すことを企業がから提示する選択肢は限られており、自分で一歩を踏み出すしかない。その状況で企業が製品・サービスが価格競争にさらされた場合、製造コストと利益を下げざるを得なくなる。結果、コスト低減は下請け企業への価格転嫁、利益低減は従業員の賃金削減によって実現される。
下請け企業は、価格転嫁されることでより厳しくなるため、正規雇用から非正規雇用の採用に切り替えることでコストの圧縮を図る、結果、労働生産性が低いことによって、労働環境や賃金は悪化してきた。
海外では新卒一括採用についてはあまり見られないが、パレート法則は人種に問わず有効らしいので、日本と同様に海外でも労働生産性は低くなると考えられる。しかし、海外では、労働力は流動性があるため、その業務に対して向いてなく労働生産性が低い従業員は転職するか、解雇される。その従業員は
1.自分に向いている職業または企業を探す
2.自己研鑽で能力向上する
のどちらかを選択する。企業側は求める労働生産性をもつ新たな従業員を採用することで会社としての労働生産性を高め、より競争力を向上させ、コストを削減し、高い賃金で従業員に応えるようになっていると考えられる。
しかし、パレート法則が興味深いのは、どんな人員構成でも普遍性があるということである、つまり、優秀な人材を集めても、ある期間を経ると2:8の法則が成り立つということである。これは、個々の人間の能力が優秀か劣っているかの問題ではなく、人間という生物が本能的にもつ性質なのであろうか?したがって、海外では常に全体的な労働生産性を高く維持するために活発な解雇と採用を繰り返しているのだと考える。さらに興味深いのは、解雇された人間は、再雇用先でも8割に入るかというと、逆に2割に入ることも珍しくないということである。これらのことから考えると、ある組織で労働生産性が低い従業員は能力が低いということではなく、その組織や業務と相性が良くないだけであり、相性が良い組織と業務と出会うことで高い労働生産性を発揮することが可能ということである。
現在、日本でも、徐々にではあるが転職意欲の高まりによって労働者の流動性が高くなりつつある。結果として、個々の労働者が意欲的に取り組むことができる組織、業務につくことで全体として労働生産性が向上されていくことを期待している。
現在、政策論争で、企業の「解雇権」や「労働者を守れ!!」といった論争があがっているが、パレート理論から考えれば、その企業では8割側に入っていて将来的な賃金アップが期待できない従業員も、組織や業務が異なれば2割側に入り能力が発揮でき賃金アップが望める可能性があるのだから、労使双方のメリットのためにもっと流動性を高めても良いのではないかと考える。もちろん、身体的や精神的な問題もあるのでセーフティーネットの充実も合わせて必要とは考えるが。。。。。
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