「やってやる!」と「やれるといいなあ」の差

 いつも、このブログで書いていますし、ネットでも嫌という程、「AIが広がることで大きな変革」ということを実感します。それに伴い、ベンチャーや既存の企業で様々なチャレンジが始まっています。しかし、その”チャレンジ”もやればいいと言う訳ではありません。そんなことは、インターネットの黎明期でも経験していますし、近いところではスマホアプリの開発ブームのときにも、さんざん経験したり見たりしていると思うのですが、どうも別な技術となると、また忘れてしまい同じ様なことを繰り返すようです。それらのブームにのった事業のうまくいかない原因の一つとして、「やってやる!」と「やれるといいなあ」という自主的か他力本願的かというモチベーションの差があるのではないかと思います。

そんなことを考えるキッカケになった、先日、機械翻訳で多言語によるコンテンツ海外配信の件で相談したいという引き合いがあり、とある大手出版企業にて打ち合わせを実施した際の感想です。

昨年から知り合いを通じて相談があり、GoogleやMSの機械翻訳APIを使った配信を提案し日本語→英語の評価は昨年度やりました(営業活動の一環として)。

結果としては、元の日本語に課題があり、まだ高精度の翻訳は難しいとなりました。

今回、半年ぶりに呼ばれたのですが・・・

(A社):いろいろ検討した結果として、すでにある英文でのサイトのコンテンツを英語以外の言語に翻訳したい。精度が悪い場合に発生する既存事業への影響を回避するために、小会社のサービスとして計画したい。

(私):承知しました。それで、どのような仕様になりますか?

(A社):元の自社サイトをスピャルピングし、テキストだけをAPIで翻訳し、その結果で別サイトのコンテンツを自動生成したい。 

(私):直接英文データは入手できないのですか?

(A社):まあ、元サイトの運営も子会社なんだけど、いろいろ調整が面倒なんで、ソフトでサクッとやりたいんだよね。

(私):(絶望的にメンテナンスの筋悪いけど。。。)承知しました。できると思います。

(A社):ところでさ、単にAPIサービス使って機械翻訳するだけでは、何も残らないのでつまらないんだよね、その結果を使って独自に機械翻訳サービスとかできるようにならないの?

(私):できるとは思いますが、語彙とか精度の面でサービスとしてグローバル企業並のものになるまで膨大な費用と時間がかかります。もし本気でやるのであれば、AIに関する作業を外注すると高額になるので、社内にAIエンジニアを並行で育成した方が将来の柔軟性があるのではないでしょうか。少なくとも弊社では規模的に請負いません。(やんわりと否定)

(A社):そうなんだあ、AIエンジニアの育成についてカリキュラム持っている?

(私):外部教育機関のサービスを受けるとかを勧めます。まともに基礎からやると高レベルな数学の知識が必要になりますが、DeepLearningのフレームワークベースでとりあえずプログラムを動作させるというところから始める教育はたくさんあります。

(A社):いやー実は新しいビジネスをやる小会社つくったんだ、だから、ただAPIサービス使ってコンテンツを翻訳するだけって、上には受け良くないんだよね。なんかビジネスアイデアない?

(私):(あれあれ?会社立ち上げる前に企画無いの??)いやー特にないですね。AIを使った他の会社のサービスとかは例示・説明できますが・・・・・・・・・・・(いろいろ例示するも)

(A社):でもさ、マネタイズどうやってやるの?そこなんだよね、問題は 

(私):(そのアイデアあったら自分でやってるよ・・・・)

(A社):(とあるベンチャーのサービスを指し)そこと組んでウチのコンテンツ配信できないかなって思って打診したら、カスタマイズに8000万円要求されてさあ、高くて無理でしょ。

(私):新規サービス立ち上げは開発やPRを考えるとそれぐらいかかるのではないでしょうか?(あなたの会社大企業なんだから・・・・・・既存のビジネスモデルに相乗りするんだったら、それぐらいのリスクはとれるでしょ)

(A社):単なる、コンテンツに広告のスペース提供する広告ビジネスとかも面白くないでしょ。

(私):コンテンツホルダーという強みがあると思うので、立ち上げのハードルは低いと思いますが・・・・

(A社):いやー上の方がさ・・・インバウンド向けになんかやりたいのよ。例えば、日本に来る前の観光客に情報を提供するとか面白いと思うけど、どうやってマネタイズしたらいいかねえ。

(私):(不毛だな・・・この会話・・・ここまで約1時間・・・結論が見えないなあ)・・・・・・・

(A社):おたくの会社で、AI使ったなんかいいビジネスのアイデアないの?

(私):(この質問2度目だな・・そんなのあったら自分でやってるよ・・)いやー特には、お客様の方で、ビジネスモデルを決めていただければコンサルもできますが・・・

(A社):おたくって何ができるの?

(私):(え?いまさらそれ聞く?)平たく言うと、AIの利用に関するコンサルや開発の”ご支援”です。

(A社):そうなんだあ、で今後すればいいの?いや〜上の方がさあ〜(前の会話の繰り返し・・)

(私):まず、ビジネスの企画が固まりましたら、お呼び下さい。。。。

この会話でわかることは、A社は、誰も能動的に変革しようとしていないことです。経営層はその担当を任命して、その担当に丸投げしようとし、その担当は、どこかいいアイデアを持ってそうな会社に丸投げをしようとしています。しかも、何が目的なのか、変革するのは何なのか(もしくは変革したくないのか)すら明確にできていません。私も含めて、会社の経営に参画するものはこれらのポイントを常に意識し、発信するのが重要かと考えました。