最近になってAI研究を進める米国の企業で、AIが独自言語を生み出したことについての記事がいくつかありました。この件についてAI研究の末席にいる者として考えてみます。
・グーグルの翻訳AIが「独自の言語」を生み出したといえる根拠
・FacebookのAIは処分されてなんかいない、我々はSFになれない
特に2番目の記事には反響が大きかったように思われます。AI独自の言語の生成については1番目のGoogle翻訳の際に研究者以外ではそれほど話題になりませんでしたが、やはり危機感を持たせるような報道の仕方でどの様にもなるということでしょうか。それとも、「言語を生成」ではなく「会話」という、「独自にコミュニケーション」というところが興味を引くということでしょうか。
2番目の記事では、何を恐れているのか良く理解できませんが、AI同士が学習の結果として独自の言語でコミュニケーションを取り出すのはあり得ることですが、新たな言語がでてきても、人間が必ずしも解読できないということは意味していないのでは危機感を持つ必要はないと考えます。
先日、友人の機械翻訳の研究者と懇談しましたが、「自然言語」に対していくつかの知見を得ました。翻訳の研究は元々は暗号解読から始まったということです。つまり、基本的に理解できないようになされているコミュニケーションを様々な仮説を置きながら、自言語とのマッピングを試していく結果として解読(翻訳)可能になるということです。
人間の場合は言語が異なっていても同じ世界観を共有することができるので、それをベースに単語や文法のマッピングをすることでなんとか翻訳というのが成立し、異なる言語を利用していても相互理解できたと(思い込む)ことができます。しかし、例えば、人間が理解できない数万次元空間の情報をコンピュータ同士が独自のコミュニケーション言語でやりとりしようとした場合、人間はその空間を理解できないので、それを表現する言語を理解することはできないのではないか思います。(研究者同士が○○理論の○○空間と言って会話しているのを一般人が理解できないように)
また、動物は犬や猫、チンパンジーやオラウータンのように種別によっては、ヒトの言葉を理解する(またはコミュニケートできる)と思います。ただし、人間がそう感じないのは、ヒトの言葉を理解できるだけの学習時間を人間が動物に与えていないか、「理解できた」と人間が認識できるだけコミュニケーションできていないだけかもしれません。
そういう意味ではAIが同様の考えを人間に持つ時がくるかもしれません。決して、人間がAIよりも知能的に「上位」の立場であるとはいいがたい現状であるので、そのような場合には、人間がわかりやすく表現するようにAIに命令するという方法が必要になります。