IBMがソフトバンクとワトソン日本語版開発

米IBMは2014年10月8日、人工知能型コンピューター「ワトソン」の日本語対応版をソフトバンクと共同で開発し、2015年にも事業展開する方針を明らかにした。ロボット分野でも関係を深める。次世代IT(情報技術)である人工知能コンピューターの活用に弾みがつきそうだ。

IBMは8日、米ニューヨークでIBMワトソングループ・グローバル本部の開所式を開いた。ワトソン事業を担当するマイク・ローディン氏は講演で「ワトソンの多言語化を進めており、日本語対応の基盤をソフトバンクと共同開発している」と語った。

ワトソンは情報が爆発的に増えるビッグデータ時代に、膨大な情報を分析し経営判断の前提となる選択肢の絞り込みなどに機能を発揮するとされる。人間の脳のように経験から学ぶこともできる。現在、ワトソンの対応言語は英語のみ。今後は日本語、スペイン語、ポルトガル語の対応を優先的に進める。IBMは日本語版の開発で、ソフトバンクと組んで翻訳やデータ出入力といった日本語にかかわるシステム基盤を構築する。

ローディン氏はソフトバンクとロボット分野で協業するとも語った。ソフトバンクが手掛けるパーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」への人工知能コンピューター技術の活用範囲などを拡大するとみられる。

Chef Watson

WatsonはChefになるべく、『Bon Appetit』誌に掲載された9,000件のレシピをクロールして、食材の組み合わせ方、料理スタイル、料理の盛りつけ方等に関するデータをパターン学習した。

アプリには、使いたい食材と避けたい食材を入力する。そして、つくりたい料理の種類(ブリートやパスタなど)と、『Bon Appetit』誌のタグ(イタリアン、アジアン、簡単など)に基づいたスタイルを決める。

するとシェフ・ワトソンは、ものすごい数の可能な組み合わせを見つけ出し、一般的なものから実験的なものまで、10グループの上位100件を表示してくれる。

「コンピューターは、人間が想像・創造し、発明することを助けられるだろうか」と、『Bon Appetit』誌のアダム・ラポポート編集長は問いかける。「味の組み合わせは無限にある。人間はただ、いままでは思いつかなかったという理由で探究していないだけなのだ」

シェフ・ワトソンは、データベースから集めた情報をそのまま吐き出すわけではない。集めたデータについて、文脈に沿って学習し、知識を深めることができる。IBMのワトソングループの責任者であるスティーヴ・アブラハムは、「われわれが目指しているのは、認知システムはいま何ができて、新しいものの発見にどれくらい役に立つのかを示すことだ」と語る。「料理はそのひとつの例なのだ」

IBM Watsonとは?

ワトソンは、IBMが開発した質問応答システムで、2009年4月に米国の人気クイズ番組「ジェパディ!」(Jeopardy!)にチャレンジするコンピューターとして発表された。

これは1997年に、当時のチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフに勝利したIBMのコンピュータ・システムであるディープ・ブルーに次ぐプロジェクトである。しかし、クイズ番組では自然言語で問われた質問を理解して、文脈を含めて質問の趣旨を理解し、人工知能として大量の情報の中から適切な回答を選択し、回答する必要がある。IBMはこの技術を、将来的には医療、オンラインのヘルプデスク、コールセンターでの顧客サービスなどに活用できるとしている。

2011年1月13日にはトーマス・J・ワトソン研究所でワトソンの公開とアメリカ合衆国のクイズ番組「ジェパディ!」での人間と対戦デモが行われた。ワトソンは、10台のラックに搭載されたPower Systems 750で構成され、2880個のPOWER7プロセッサ・コアを搭載し、オペレーティングシステムはLinux、処理性能は80テラFLOPS(TFLOPS)で、インターネットには接続されておらず、本・台本・百科事典(Wikipediaを含む)などの2億ページ分のテキストデータ(70GB程度、約100万冊の書籍に相当)をスキャンして取り込んだ。

2011年2月14日からの本対戦では、15日と16日に試合が行われ、初日は引き分け、総合ではワトソンが勝利して賞金100万ドルを獲得した。賞金は全額が慈善事業に寄付される。

2013年11月14日には、一般のデベロッパーに提供することを発表した。

「Wikipedia」より

Deep LearningによるGoogleの猫認識

YouTubeにアップロードされている動画から、ランダムに取り出した200×200ピクセルサイズの画像を1000万枚用意し、これを用いてDeep Learning を行った(3%前後の画像に人間の顔が含まれていた。猫が含まれる画像もたくさんあった)。
Deep Learning とは、ここ最近になってその有効性が注目されている新しい機械学習の手法で、多段階のニューラルネットワークを構成する。ニューラルネットワークの最初の層の入力は各画素(200×200=40,000)のRGBの値で、9つの階層を構築した。1000台のコンピュータで3日間かけて学習を行った。その結果、人間の顔、猫の顔、人間の体の写真に反応するニューロンができた

ホーキング博士「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」

BBCのインタビューに対して、ホーキング博士は次のように語った。「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」

ホーキング博士は「人工知能が自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計しなおすこともあり得る。ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。いずれは人工知能に取って代わられるだろう」と語った。

人工知能の進化に人類が歩調を合わせることができる能力を、人工知能が上回ることになる、いわゆる「技術的特異点」についてホーキング博士は既に懸念を表明している。5月、イギリスの新聞「インディペンデント」に掲載された論説で博士は「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。だが同時に、『最後』の出来事になってしまう可能性もある」と述べている。

 

人類はAIを恐れる必要はない:Googleエリック・シュミット語る

グーグルは最近、社内にロボット研究所を立ち上げたりもしている。しかし、エリック・シュミットは自動運転車の助手席に座るのが「完全にハッピー」ではない(つまり、恐ろしい)体験だと認める一方で、機械が仕事を奪ったり、世界を征服したりするといった心配は、すべて正当性を欠くものだとも考えているのだ。

「こうした不安は、よくあるものです」と、彼はニューヨークで開かれたイヴェント「Financial Times Innovate America」のステージ上で語った。「(ですが)このように考えるのは、ある意味見当違いでもあります」。

「織機の歴史を振り返ってみましょう。この(自動織機が世に出た)時代にも、混乱は見られました」と彼は述べる。「しかし、より機械化された衣料の製造技術を取り入れることで、人々は皆、より裕福になりました」。

さらに彼は、歴史上から見たとき、経済はこうした新しい技術を導入するほど、繁栄したのだと主張する。「コンピューターを導入すると、給料も上がるということを示す証拠もたくさんあります」と彼は言う。「コンピューターを使って仕事をしている人は、そうでない人よりも多く稼いでいることを示す証拠も多くあるのです」。

AIを恐れるよりも、いま本当に心配すべきこと

本当の脅威は、世界中の教育制度にある、と彼は考えている。つまり、ますます進化する「知的機械」と一緒に働くのに求められるスキルを、生徒たちに教えられていないというのだ。

シュミットはこう説明する。「本当に心配すべきことは、人々が来る新しい世界に対応できるようにすること。そして、収入を最大限増やせるようにするために、教育制度や奨励制度をグローバルに改善するのに何をすべきか、ということなのです」。

また、シュミットは、AIは人々が想像しているよりも、まだかなり原始的だということも認めた。その証拠として、彼は数年前にグーグルが行ったある実験について説明した。

グーグルの科学者たちは人工の神経回路網を開発し、「これが何を学ぶか」を確認しようと11,000時間にわたってYouTubeのヴィデオを見せたのだ。

「神経回路網は、『猫』の概念を発見しました」とシュミットは述べたのだが、その声のトーンには落胆が感じられた。「この結果について1つだけはっきり言えるのは、ここまでしかわれわれは到達していないということです」。

「人類はAIによって悪魔を呼び出そうとしている」

Elon Musk氏は、人間の手を借りずに駐車や運転をすることができるスマートな自動車を先頭に立って擁護している。しかし、次の段階のコンピュテーションに関しては、Musk氏は気味の悪い発言を繰り返しており、その内容はますますエスカレートしている。同氏は、人工知能(AI)が悪意を抱くようになる潜在的可能性に対して、恐怖を依然として抱いている。

Musk氏は「2014 Centennial Symposium」で、「AIによって、われわれは悪魔を呼び出そうとしている。五芒星と聖水を持つ男が登場する物語は皆さんもご存じだろう。その男は悪魔を操ることができると確信しているが、実際にはそれは不可能だ」と述べた。

Musk氏は以前、映画「ターミネーター」シリーズのようなことが起きると不安を述べ、同氏はAIを監視できるようにする目的のためだけに同テクノロジを扱う企業に出資していると話した。その後、ツイートで再び懸念を表明し、AIは「もしかすると核兵器より危険かもしれない」と述べた。つい数週間前には、Musk氏は別のイベントで、スパム撲滅の仕事を課された未来のAIシステムがそのタスクを完遂する最高の方法は人類を絶滅させることだと判断するかもしれない、と冗談半分に語っている。

未来におけるAIの悪魔的な力には、どう対処すればいいのだろうか。テクノロジ業界の大物としては奇妙な動きだが、Musk氏は、政府規制当局という別の悪魔(これは1つの政治的見方にすぎないが)によって悪魔を制するのも妙案かもしれないと提案した。

同氏はAIに言及して、「実存する最大の脅威は何かを推測してほしいと言われれば、おそらくAIだと答えるだろう。人類が愚かな過ちを犯さないようにするため、国家レベルと国際レベルで、何らかの規制当局による監視を行うべきだと私は考えており、その思いをますます強めている」と述べた。

Singularity(技術的特異点)とは

Singularity(技術的特異点)は、「強い人工知能」や人間の知能増幅が可能となったとき出現する。未来学者らによれば、特異点の後では科学技術の進歩を支配するのは人類ではなく強い人工知能やポストヒューマンであり、従ってこれまでの人類の傾向に基づいた人類技術の進歩予測は通用しなくなると考えられている。

この概念は、数学者ヴァーナー・ヴィンジと発明者で未来学者のレイ・カーツワイルにより初めて提示された。彼らは、意識を解放することで人類の科学技術の進展が生物学的限界を超えて加速すると予言した。意識の解放を実現する方法は、人間の脳を直接コンピュータネットワークに接続し計算能力を高めることだけに限らない。それ以前に、ポストヒューマンやAI(人工知能)の形成する文化が現生人類には理解できないものへと加速度的に変貌していくのである。カーツワイルはこの加速度的変貌がムーアの法則に代表される技術革新の指数関数的傾向に従うと考え、収穫加速の法則(Law of Accelerating Returns)と呼んだ。

特異点を肯定的に捉えその実現のために活動する人々がいる一方、特異点は危険で好ましくなくあってはならないと考える人々もいる。実際に特異点を発生させる方法や、特異点の影響、人類を危険な方向へ導くような特異点をどう避けるかなどが議論されている。